疾患概念・原因
原発性アルドスレロン症(primary aldosteronism; PA)とは、 副腎皮質腺腫あるいは過形成を生じた副腎皮質球状層からアルドステロンが過剰に分泌され、腎臓の尿細管に作用し、Na貯留、K喪失、高血圧(2次性高血圧)をきたす疾患です。別名Conn症候群と呼びます。1955年に米国内分泌専門医Jerome W. Connにより初めて報告されました。
原因としてアルドステロン産生腫瘍、特発性アルドステロン症、グルココルチコイド反応性アルドステロン症があります。アルドステロンとは副腎皮質から分泌される電解質ホルモンのことで、主として腎臓の遠位尿細管に作用しNa+やCl-の再吸収の亢進、K+、H+の排泄増加に作用します。このため血液は代謝性アルカローシスに傾きます。
疫学・症状・経過
原発性アルドステロン症の男女比は、1:2で女性に多く、30歳代から50歳代に好発します。一部の患者で本疾患の常染色体優性遺伝が報告されています。
アルドステロンが過剰に分泌されることで、ナトリウムが貯留されます。それにより体液増加に従いこれに伴い高血圧が生じ、同時にカリウム排泄増加による低カリウム血症がおこります。また、アルドステロンそのものによる脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心肥大、不整脈、腎不全など臓器障害を引き起こします。低カリウム血症による筋力の低下、脱力発作、四肢麻痺、テタニーが臨床症状としてみられます。
心電図検査で、ST低下やT波平坦化、U波出現などの異常所見もみられます。腎濃縮力障害による多飲・多尿や代謝性アルカローシスもみられ、血液検査で血漿レニン低下、血漿アルドステロン上昇がみられるとき原発性アルドステロン症を考えます。
血中アルドステロン濃度/血漿レニン活性の比(ARR)がスクリーニングの良い指標になります。高血圧症患者の5~20%程度の頻度で発見されています。血圧値が160/100㎜Hg以上、治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧剤を使っても血圧が下がらない症例)、低カリウム血症、副腎腫瘍をもつ高血圧、40歳以下の脳卒中の既往ある高血圧、一等親の中に本症を発症した家族歴などで特に頻度が高いといわれています。
検査・診断
アルドステロン過剰分泌の確定として、フロセミド立位試験、カプトプリル負荷試験と生理食塩水負荷試験をおこないます。 フロセミド立位試験とは、30分間ベッド上で安静後採血を行い利尿降圧剤であるフロセミド40mgをボーラス投与(一気に静脈投与)します。その後ベッドから立位に移り、室内で軽歩行など立位保持のまま過ごし、120分後の採血を行い利尿薬による循環血漿量低下を確認する試験です。また、立位による交感神経緊張によりレニン分泌は刺激されるのですが、本症ではレニン分泌に変化はみられません。
カプトプリル負荷試験とはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のカプトプリルを50mg服用し、その前後の血液中のレニンを測定します。通常はアルドステロンが減少しレニンが上昇しますが、本症ではアルドステロンが上昇、レニンが下降のままになります。
生理食塩水負荷試験は、生理食塩水の投与によって循環血液量を増加させる試験です。これにより腎血流量が増加するため、通常レニン分泌が抑制されるためアルドステロンの分泌も抑制されます。原発性アルドステロン症の場合は、アルドステロンの分泌は抑制されません。
治療・予後
アルドステロン産生腺腫の場合、患側副腎摘出術を行います。手術ができない場合、両側の副腎の病変がある場合はスピロノラクトンやCa拮抗剤の投与を行います。特発性アルドステロン症の場合、スピロノラクトン、トリロスタン、Ca拮抗剤、ACE阻害剤の投与を行います。 適切に治療されれば心血管系イベントを防ぐことができます。放置すれば脳卒中、心筋梗塞、不整脈、腎不全を高率に合併します。手術後は高アルドステロン血症状態が是正され、ほとんどの症例で血圧は改善します。