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2017年09月

うつ病の古典的臨床分類

 わが国のうつ病患者の総数は90万人を超え、この20年間で10倍に増加した。うつ病の古典的臨床分類は次のとおりである。なお、下記リストの( )内は、DSM5の診断名である。

    1. 内因性うつ病
             単極性うつ病(大うつ病)
             双極性うつ病(1型と2型双極性障害)
    2.神経症性うつ病
    3.反応性うつ病
    4.脳器質性・症候性うつ病

その他にキールホルツの分類、笠原・木村の分類、DSM-Ⅳによる分類、ICD10による分類などがある。近年ではうつ病の原因よりもその症候を多軸評定する分類へと移行しているようである。

 うつ病の中核となる症状は、気分の落ち込み、すなわち抑うつ気分である。気分が重い、寂しい、悲しい、すべてがむなしい、涙もろくなった、などの訴えがある。

 うつ病の精神症状には、抑うつ気分の他に興味や喜びの減退、倦怠感、気力低下、集中力低下、焦燥、制止、仮性認知症、うつ病性昏迷、微小妄想、罪業妄想、貧困妄想、心気妄想などがある。

 うつ病の身体症状には、自律神経症状を中心とする症状が出現し、心気傾向を伴うと身体面の愁訴を繰り返しやすい。入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠障害が出現する。食欲低下、便秘、口渇などの消化器系症状の訴えも多い。身体症状が前面に出ているうつ病を仮面うつ病という。

 うつと自殺との密接な関係は以前より指摘されている。自殺者の3分の1が精神病徴候を示し、その3分の1がうつ病であるとの報告もある。さらに1960年頃からの調査によると、自殺者の30~70%がうつ病の診断にあてはまるという報告もある。うつ病は精神疾患の中でもっとも自殺率の高い疾患である。

 一般にうつ病の病初期と回復期に自殺が起こりやすいといわれている。回復期と病初期は気分変動が激しい時期である。また自殺企図は焦燥感が強いときと精神運動抑制が軽減する時期に多い。特に回復期は、周囲の油断、復職の負担感などから自殺が起こりやすい。うつ病の極期は、精神運動抑制が強く、自殺念慮を内に秘めていても行動に移すことが困難であるとされているが、極期にも自殺念慮はあり自殺の可能性があることは否定できない。

 うつ病の自殺の50%が初回入院後1年以内に起こるとの報告もある。うつ病の自殺は発病後の1年以内に最も多く、徐々に低下していくといわれている。

 うつ病の自殺の危険因子としては、不安焦燥感、不眠、意識障害、認知症、重い自責感、孤独感、絶望感、身体疾患、心気妄想、自殺企図、自殺念慮などがいわれている。


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DSM5による統合失調症の診断基準は次のとおりである。(B)以下は略。

-(A) 以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのが1カ月間(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在する。これらのうち少なくともひとつは(1)か(2)か(3)である。

  -(1)妄想(delusion)-  訂正できない思い込み          

             ①被愛妄想:誰かが自分に恋愛感情を持っていると思い込む。
             ②誇大妄想:自分が飛び抜けた才能を持ち、重要な発見をしたなどと思い込む。
             ③嫉妬妄想:配偶者や恋人が不貞を働いていると思い込む。
             ④被害妄想:自分を陥れるような陰謀により、邪魔され、だまされていると思う。
             ⑤身体妄想:自分がひどいにおいを発している、寄生虫が体中に巣くっているなどの身体の機能や感              覚に関係した思い込み。


  -(2)幻覚(hallucination)- 実際にない声が聞こえる幻聴

  -(3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)

  -(4) ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
              精神運動興奮- 奇妙で不自然な態度、支離滅裂な独語、衝動的行為、同一行動を激しく繰り返す常同               行為、不安定な感情を伴う興奮状態など
              精神運動昏迷- 自発運動の停止、強硬症、蠟屈症、拒絶症などの無動状態
 
- (5)陰性症状(すなわち感情の平板化、意欲欠如)
       残遺状態- 陽性症状が消失し、感情鈍麻、意欲低下などの陰性症状のみが残っている状態

すなわち3つの代表的陽性症状の1つ以上と陰性症状その他の症状が、全体として6か月以上続いている場合に診断するようである。つまり精神科専門医による精神病の診断でも、発病から6か月以上経過していないと直ぐには確定診断できないものと思う。
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