腰痛症つまり筋・筋膜性腰痛症は、腰痛の中で一番多いもので症状名である。いわゆる急性腰痛症(ぎっくり腰)とも呼ばれ、原因は腸腰筋(大腰筋、小腰筋、腸骨筋)の持続的収縮(拘縮)といわれている。この中の一番大きな筋肉である大腰筋は、第一腰椎から第五腰椎までに腱が付いていて、その部位から当該筋肉は起こり骨盤の前を通り、大腿骨の内側(小転子)に終着する。この大腰筋の拘縮により、背筋の伸ばす筋肉である傍脊椎筋の腸骨に近い部分が疲労して炎症や循環障害が発生し腰痛が起こると考えられている。整形外科的には、骨のX線検査やMRI検査をしても異常が発見されない。 特徴的な症状として以下のようなことが挙げられる。
(1)傍脊柱筋(背骨の両脇の背筋)の圧痛
(2)運動時痛(寝返り、立ち上がり動作、前後屈など)
(3)姿勢による痛みの変化(痛い・痛くない姿勢)
(4)下肢の痛み、しびれ、感覚異常、筋力低下などがない
神経学的異常所見がなく他の疾患が否定された筋・筋膜性腰痛症には手術適応はなく保存的に治療する。  発症から1週間くらいまでの急性期には、安静、鎮痛薬や筋弛緩薬の投与、シップなどの外用薬、腰椎バンドやコルセットなどの外固定が行われる。ときに医師の判断により注射も併用される。1~2週間目の回復期からそれ以降の治癒期では、リハビリテーションとして腰痛体操から牽引、電気治療、温熱療法、マッサージなどの理学療法が実施される。