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2017年01月

日本甲状腺学会による「甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)」によると、甲状腺クリーゼ(Thyrotoxic storm or crisis)とは、甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し、これに何らかの強いストレスが加わった時に、甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果、生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう。

診断のための必須項目としては、甲状腺中毒症(thyrotoxicosis)の存在(遊離 T3 および遊離 T4の少なくともいずれか一方が高値) があることであるが、実際には次のような臨床症状から診断する。
  1. 中枢神経症状
    不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡。
    (Japan Coma Scale (JCS)1 以上または Glasgow Coma Scale (GCS)14 以下)
  2. 発熱(38℃以上)
  3. 頻脈(130回/分以上)
    心房細動などの不整脈では心拍数で評価する。
  4. 心不全症状
    肺水腫、肺野の50%以上の湿性ラ音、心原性ショックなど重度症状。
    (New York Heart Association (NYHA)分類 4 度または Killip 分類 III 度以上)
  5. 消化器症状
    嘔気・嘔吐、下痢、黄疸(血中総ビリルビン > 3mg/dl)

ただし、明らかに他の原因疾患があって発熱(肺炎、悪性高熱症など)、意識障害(精神疾患や脳血管障害など)、心不全(急性心筋梗塞など)や肝障害(ウイルス性肝炎 や急性肝不全など)を呈する場合は除く。しかし、このような疾患の中にはクリーゼの誘因となるため、クリーゼによる症状か単なる併発症か鑑別が困難な場合は誘因に より発症したクリーゼの症状とする。


なお、高齢者は、高熱、多動などの典型的クリーゼ症状を呈さない場合があり (apathetic thyroid storm)、診断の際注意する。 甲状腺クリーゼの確実例と疑い例の診断は次のとおりに行う。


確実例

必須項目および以下を満たす。

a.中枢神経症状+他の症状項目1つ以上、または、

b.中枢神経症状以外の症状項目 3 つ以上
 
疑い例  

a.必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ、または  

b.必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫の存在 があって、確実例条件の a または b を満たす場合。


甲状腺クリーゼでは誘因を伴うことが多い。甲状腺疾患に直接関連した誘因とし て、抗甲状腺剤の服用不規則や中断、甲状腺手術、甲状腺アイソトープ治療、過度の甲状腺触診や細胞診、甲状腺ホルモン剤の大量服用などがある。また、甲状腺に 直接関連しない誘因として、感染症、甲状腺以外の臓器手術、外傷、妊娠・分娩、副 腎皮質機能不全、糖尿病ケトアシドーシス、ヨード造影剤投与、脳血管障害、肺血栓塞栓症、虚血性心疾患、抜歯、強い情動ストレスや激しい運動などがある。


 





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骨髄線維症(myelofibrosis; MF)とは、造血幹細胞の異常により骨髄の広い範囲で線維組織が増加する病気で、異常な形状の赤血球が産生されたり、貧血や髄外造血、脾臓の腫大が起こります。原発性と二次性に分けられ、原発性骨髄線維症は、多能性造血幹細胞の腫瘍性増殖により、骨髄の広汎な線維化と脾腫を伴います。二次性骨髄線維症は、他の疾患に伴っておこる骨髄の線維化で、造血系腫瘍(白血病や悪性リンパ腫など)や結核などの炎症性疾患、膠原病および骨疾患などでみられます。骨髄増殖性腫瘍のひとつに位置づけられます。

骨髄線維症は、主に巨核球系細胞が増殖することが原因と考えられていて、本疾患患者の約50%にJAK2遺伝子異常が認められます。骨髄の線維化は、血小板の母細胞である巨核球から線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor; FGF)が放出されることによるものと考えられている。

自覚症状や貧血が軽度のときは、無治療で経過観察をするが、貧血や血小板減少が高度のときは成分輸血、脾腫による腹部症状が重篤なときはハイドロキシウレア(Hydroxyurea)や脾臓摘出などを考慮する。新規薬剤としてJAK2阻害薬であるルキソリチニブ(Ruxolitinib)や、サリドマイドの誘導体であるポマリドマイド(Pomalidomide)などが、近年承認されている。治癒をもたらしうる治療法は同種造血幹細胞移植つまり骨髄移植である。

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