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2021年01月

分節性動脈中膜融解症(segmental arterial mediolysis; SAM)とは、炎症性・動脈硬化性の血管異常を伴わない中高齢者が、突然の腹腔内出血で発見される疾患で、何らかの理由により腹部内臓動脈の中膜平滑筋が変性・融解し、中膜に血管解離を生じることで動脈瘤を形成する稀な疾患である。

診断は主に病理診断によって行われるが、腹部内臓動脈瘤の中で以下の4点を認めるものを分節性動脈中膜融解症とする臨床診断基準が提唱されている。
①中高年
②炎症性変化や動脈硬化性病変などの基礎疾患がない
③突然の腹腔内出血で発症
④血管造影で血管の数珠状の不正な拡張と狭小化

罹患部位としては、結腸動脈系、胃動脈系と膵臓アーケードの降べき順に多い。

治療は、外科手術または血管内治療が行われる。膵臓アーケードに関しては血管内治療が好まれる。また、腹腔動脈と上腸間膜動脈は、太く外膜の強度が高い血管であることから、解離に至っても破裂に至らず治癒に至る可能性が高い。孤立性上腸間膜動脈解離や孤立性腹腔動脈解離もSAMの1形態ではないかと考えられている。
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副腎性サブクリニカルクッシング症候群(subclinical Cushing's syndrome; SCS)とは、潜在性クッシング症候群で、いわゆるクッシング症候群の前段階病態といえます。副腎からのコルチゾール分泌が軽微で特徴的な症状がないが、副腎皮質に腫瘤が存在します。コルチゾールの自律持続的な過剰分泌が起き、
高血圧、耐糖能異常、糖尿病、脂質異常症、肥満といった心血管疾患の発症リスクが高まるとの報告があります。また骨折リスクも高くなります。副腎腫瘤の非手術例ではこれらが増悪傾向にある病態といえます。

診断基準
  1. 副腎腫瘍の存在(副腎偶発腫)
  2. クッシング症候群の特徴的な身体徴候の欠如
  3. 検査所見
    1)血中コルチゾールの基礎値(早朝値)が基準範囲内
    2)コルチゾール分泌の自律性
    3)ACTH分泌の抑制
    4)日内リズムの消失
    5)副腎シンチグラムで、健側の抑制と患側の集積
    6)血中DHEA-Sの低値
    7)副腎腫瘍摘出後、一過性の副腎不全症状があった場合、
      あるいは付着皮膚組織の萎縮を認めた場合

上記の下線部は必須基準で、それに加えて1mgDST後の血中コルチゾール値(5μg/dL以上)により確定診断とされます。なお、副腎腫瘍が3cm以上または増大傾向にあり、画像診断上で副腎癌の可能性も否定できない場合には副腎摘出術が行われます。

(参考)
日本内分泌学会雑誌 Vol.93 Supple. September2017
日本内科学会雑誌 第108巻10号: 2148~2153,2019
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伝染性単核症(infectious mononucleosis)は、主にエプスタイン-バーウイルス(EBV)感染によって生じる感染症で、EBVを含む唾液による伝播が最も多い感染経路です。EBVは、5歳未満の小児の約半数が感染するヘルペスウイルスで、乳幼児期に初感染をした場合は不顕性感染で経過することが多いです。成人では90%以上がEBVに対して血清反応に陽性を示し、疲労などの症状を呈します。合併症として、気道閉塞。脾破裂、および神経症候群などの重症疾患が生じることもあります。

15~24歳頃までの若年層に好発します。年齢と共に抗体保有率は上がり、90%以上の人が35歳までに既感染となるため、40歳以上の感染者はほとんど見られません。先進国においては、約50%の人が1~5歳の間にEBVに初感染すると言われます。死亡率は1%未満であり,その多くは合併症(脳炎、気道閉塞、脾破裂など)に起因します。症例報告4-6) によると、男性よりも女性の方が、罹患患者数の多いことが報告されています。

発熱、咽頭炎、リンパ節腫脹が古典的な三徴とされます。これらの症状に先行して、筋痛、頭痛、微熱なども見られることがあります。その他には、脾腫、軽度の肝腫大および肝臓の痛み、眼窩周囲浮腫、口蓋の点状出血といった症状が挙げられます。急性期症状の大部分は、1~3週間で軽快しますが、倦怠感や機能不良は数ヶ月間持続し、慢性疲労症候群として診断されることがあります。

伝染性単核球症の診断には、異好抗体検査を用いて、白血球、リンパ球、異型リンパ球の測定、ときにEBVの血清学的検査を行います。 伝染性単核球症に類似した症候群を引き起こすウイルスとして、サイトメガロウイルス(CMV)が知られています。これは、肝脾腫と肝炎に加えて異型リンパ球の増加を示しますが、通常は重度の咽頭炎を伴いません。

治療は支持療法となります。EBVの潜伏期間は約30~50日です。倦怠感は数ヶ月間続くことがありますが、通常は最初の2~3週間で最大となって自然治癒します。急性期患者には安静が一番ですが、発熱、咽頭炎、倦怠感といった症状が和らげば、日常的な活動を再開しても問題ありません。脾破裂を予防するため、発症後1ヶ月間および脾腫が消失するまでは、力仕事やコンタクトスポーツを避けることが推奨されています。また、症状が重度の場合、入院診療を必要とする患者もいます。 合併症(重度の気道閉塞、重度の血小板減少、溶血性貧血など)をきたす場合には、コルチコステロイドが有用な事例もあります。
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